2021年12月、全世界株式の日々の値動きを2倍のレバレッジで運用するといったファンドが登場しました。
これまでは米国株式の2倍レバレッジファンドが注目を集めていますが、はたして全世界株式に2倍レバレッジは有効なのか考えてみました。
全世界株式ETF(VT)の値動きに2倍レバレッジをかけたグラフ
以下のグラフは「Vanguard Total World Stock ETF (VT)」の日々の終値の変動幅を元に2倍の変動幅で計算し、初日を100として指数化したものとります。
VTは米国上場のETFなので計算結果も米ドル建てです。
ETFから出る分配金は計算に含まれていません。
◆設定来(2008年)~2021年12月末までの比較グラフ

リーマンショックが開始地点となったため、レバレッジ2倍の場合は長期間含み損という悲惨なグラフとなりました。
設定来リターンは[VT x1]116.68%、[VT x2]144.88%。
ただVTの分配金が年平均2%程度と仮定すると、2倍のリターンはまだ1倍とトントンかやや低い程度になってしまうかもしれません。
◆2011年~2021年12月末までの10年間の比較グラフ

2011年を起点とした過去10年間のリターンを比較です。
2011~2021年のリターンは[VT x1]122.75%、[VT x2]251.80%。
1倍よりは高いリターンが得られたようですが、後述する米国株2倍と比べるとインパクトが薄いです。
※正直計算結果に自信がありません。念のため日々の終値の変動が1倍のときに計算結果が一致していることと、SPY ETFを2倍したものとS&P500 2倍レバレッジETFのSSO ETFで比較し、過去5年間のリターンが[SPYx2]270% [SSO]284.48%と大きくはズレていないことを確認しています。
2011年~2021年、各地域の1倍ETFと2倍ETFの比較
2011年から2021年末までの期間、各地域の1倍と2倍のETFを比較したグラフです。
米国上場のETFのためいずれもすべてドル建てとなります。
10年間ほぼ一貫して上昇した米国S&P500は、SPYが282%上昇する間に2倍レバレッジのSSOは1147%の上昇と、凄まじいリターンを叩き出しました。

USA! USA! USA! USA! USA! USA! USA!
VGKは10年間上下へ振れながらながらも緩やかな上昇トレンドを描きました。
UPVも上下に大きく振れながらも1倍ETFの3倍と大きなリターンを得られています。
ただ欧州株は分配金が年3%前後と多いので、VGKに分配金10年分を加算するとやや差が縮まるのかと思います。

「レバレッジETFはレンジ相場に弱い」とよく言われますが、このように緩やかに上昇するならばまだ有効ではないでしょうか。
1倍のEWJは欧州株よりも高く上昇しましたが、2021年のリターンがほぼ0%で終わってしまったためか、2倍のEZJは1.5倍程度しか上昇しませんでした。
EWJの分配金(2021年は2%)を加味するとEZJはEWJとあまり差がなかったかもしれません。

新興国株はほぼマイナス圏で推移する報われない10年間でした。
レバレッジETFが苦手とする上がらないレンジ相場になってしまったのでマイナスで着地。
VWOも分配金が多い(2021年は2.5%)ので両者の差は更に大きくなります。

米国以外のレバレッジETFは微妙ではないかという感想
正直、全世界株式の2倍レバレッジは微妙かなと思いました。
アメリカ以外の地域で運用した成績が芳しくないためです。
原因として思い浮かぶのは、アメリカとその他の地域で株主還元策の違いによるものがあると予想しています。
アメリカも配当金を出しますが、それ以上に自社株買いによるキャピタルリターンで還元することが多くなっています。
そのため今後も株価が上がり続ける可能性が高く、レバレッジETFと相性が良いのではないかと考えています。
※アメリカは近年配当より自社株買いの方が多いデータは「ウォーレン・バフェットも注目!米国株「自社株買いランキング」トップ20(マネックス証券)」を参照
※自社株買いのメリットと日米の株主還元策の違いは「米国企業が「自社株買い」をしたがるのはなぜか(ダイヤモンド・オンライン)」を参照
一方、日本・欧州・新興国のETFはインカムリターン(配当)が多く、持続的な株価上昇があまり見込めないため、レバレッジETFとの相性がはあまり良くないように感じます。
レバレッジETFは株価が上がってくれないと恩恵が受けられないので、インカムリターンよりキャピタルリターンが見込める地域への投資で利用した方が効果的だと考えます。
そのため、これらの地域の株主還元策が自社株買いにシフトしないことにはレバレッジETFを利用するメリットが薄いように思います。
今後も米国株が上がり続けるかはわかりませんが、以上のことから「可能性としてはアメリカのほうがまだある」と考えます。
というわけで、現状レバレッジETFや投資信託を購入するならばアメリカだけで良いのではないでしょうか。
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