こちらのページでは、簡単設定で省電力効果の大きい「VDDCR CPU 電圧 Offset」の設定について、
「AMD Ryzen 7 2700X」を用いて解説していきます。
「CPU 電圧 Offset」設定を行うと、パフォーマンスを維持したまま省電力化ができ、
更に「Precision Boost Overdrive」と組み合わせることでパフォーマンスアップが期待できます。
スマホで見ながら設定したい場合は、以下のQRコードを読み取ることで本ページを開けます。

「VDDCR CPU 電圧 Offset」とは
これはPCが制御するCPU電圧を初期設定から設定した電圧分だけ増減させる機能です。
今回紹介するのは、CPU電圧 Offsetを「-(マイナス)」方向に設定した時の効果です。
初期設定よりも低い電圧で動作させることで消費電力の減少、更に発熱の低下が見込めます。
Ryzenはどうも電圧を盛りすぎているのか効果が大きいです。
余談ですが、昔のIntel CPUはOffsetを「+(プラス)」に設定してオーバークロックを楽しんでいた方がいるようです。
「VDDCR CPU 電圧 Offset」を設定する利点
CPU電圧 Offset を設定する利点は、
・UEFI(BIOS)画面からわりと簡単に設定できる
・節電効果が期待でき、発熱が低下する
・パフォーマンスは変わらず
・「Precision Boost Overdrive」の効果を高める
という点です。
一方で面倒なこととしては、
・環境によってはあまり電圧を下げることができない場合があるとのこと
・電圧を下げすぎて起動しなくなるとCMOSクリアが必要になる可能性がある
という点があります。電圧設定の適正値の見極めがちょっと手間かもしれません。
「VDDCR CPU 電圧 Offset」の設定方法
マザーボード「ASUS PRIME X470-PRO」を用いた設定方法を解説していきます。
※設定項目は使用しているメーカーや機種によって異なります。
1.UEFI(BIOS)画面を開く(PCの電源を入れたらF2キーもしくはDELキーを連打)
2.「Ai Tweaker」内の「VDDCR CPU 電圧」のプルダウンメニューから【Offset mode】を選択
3.「VDDCR CPU オフセットモードサイン」のプルダウンメニューから【-】(マイナス)を選択
4.「VDDCR CPU Offset Voltage」の【Auto】を消して【0.10000】(※1)を入力
5.「終了」内の【変更を保存しリセット】を選択
(※1)必ずしも-0.1Vで動作するわけではないので、数値は適宜調整してください。
以上で設定完了となります。
正常に動作すれば起動します。
電圧が低すぎて起動しなかった場合は自動的にSafe modeで再起動するのを待つか、
CMOSクリアを実施し、「VDDCR CPU Offset Voltage」を再度設定します。
CMOSクリアの参考:CMOSクリア手順 – TEKWIND
「VDDCR CPU 電圧 Offset」設定前後の比較
実際に設定してベンチマークを走らせた比較を紹介します。
CPU:AMD Ryzen 7 2700X
CPUクーラー:Noctua NH-U14S
マザーボード:ASUS PRIME X470-PRO
BIOS:AGESA 1.0.0.4B(バージョン 5406)
メモリー:G.Skill F4-3600C19D-16GSXWB
その他接続機器:SSD2台、HDD2台、ケースファン4台、マウス、キーボード、ヘッドセット、ゲームコントローラ
電源プラン:AMD Ryzen Balanced
ベンチマーク結果は以下の通り
- CINEBENCH R20 ベンチマーク中の消費電力が27W減少した
- 消費電力が減少したことで、ベンチマーク中の最大温度が2度低下した
CINEBENCH R20 | ||||||||
Offset 設定 | マルチ スコア(cb) | スコア 増減率 | 消費 電力(W) | 増減値 (W) | CPU電力 効率(cb/W) | 電力効率 変化率 | 最大CPU 温度 | 温度差 |
Offset 未設定 | 3967 | 0.0% | 218 | 0 | 18.2 | 0.0% | 57 | 0 |
Offset -0.1V | 3996 | 0.7 % | 191 | -27 | 20.9 | 15.0% | 55 | -2 |
一応スコアも増えていますがブレだと思います。
マルチスコア(cb) … CINEBENCH R20のCPUスコア
スコア増減率 … 定格を基準にしてスコアが増減した割合
消費電力(W) … ベンチマーク中にワットモニターで計測したPC本体の消費電力
CPU電力効率(cb/W) … マルチスコアを消費電力で割り、消費電力あたりのスコアを割り出したもの。高いほど効率的
電力効率変化率 … 定格を基準にしてCPU電力効率が増減した割合
最大CPU温度 … CINEBENCH R20が完走するまでの最高温度
温度差 … 定格を基準にした最大CPU温度の増減値
アイドル時の消費電力は変化しませんでした。
Offset 設定 | アイドル消費電力(W) | 電力増減値(W) |
Offset 未設定 | 79 | 0 |
Offset -0.1V | 79 | 0 |
「VDDCR CPU 電圧 Offset」と「PBO」を併用する
「CPU電圧 Offset」と「Precision Boost Overdrive」を併用した効果について、
ベンチマーク結果をもとに見ていきたいと思います。
【重要】 Precision Boost Overdriveを有効にするとメーカーやショップの保証対象外になるのでご注意ください。
CINEBENCH R20
「CPU 電圧 Offset」とPBOを併用した「Offset -0.1V PBO 141/96/160」は、
「CPU 電圧 Offset」を設定せずにPBOのみ有効にした「未設定&141/95/160」と比べて、
マルチスコアが上昇した上、消費電力は減少しました。
Offset&PBO(PPT/TDC/EDC) | マルチ スコア(cb) | スコア 増減率 | 消費 電力(W) | 増減値 (W) | CPU電力 効率(cb/W) | 電力効率 変化率 | 最大CPU 温度 | 温度差 |
未設定&141/95/140【定格】 | 3967 | 0.0% | 218 | 0 | 18.2 | 0.0% | 57 | 0 |
未設定&141/95/160 | 4001 | 0.9% | 229 | 11 | 17.5 | -4.0% | 60 | 3 |
-0.1V&141/95/140 | 3996 | 0.7% | 191 | -27 | 20.9 | 15.0% | 55 | -2 |
-0.1V&70/95/100【省電力】 | 3515 | -11.4% | 140 | -78 | 25.1 | 38.0% | 37 | -20 |
-0.1V&141/96/160【パフォーマンス】 | 4103 | 3.4% | 224 | 6 | 18.3 | 0.7% | 61 | 4 |
Passmark 9.0
Passmarkでは、「CPU 電圧 Offset」の設定の有無でスコアは変化しませんでした。
Offset&PBO(PPT/TDC/EDC) | CPUMarkスコア | スコア増減率 |
未設定&141/95/140【定格】 | 17171 | 0.0% |
未設定&141/95/160 | 17563 | 2.3% |
-0.1V&141/95/140 | 17172 | 0.0% |
-0.1V&70/95/100【省電力】 | 15654 | -8.8% |
-0.1V&141/96/160【パフォーマンス】 | 17562 | 2.3% |
PBOの設定 … PPT/TDC/EDCの設定
CPUMARKスコア … PassmarkのCPU MARKのスコア
スコア変化率 … 定格を基準にしてスコアが増減した割合
アイドル時の消費電力、最大Clock
PBOで「EDC」を【160】に引き上げるとアイドルの消費電力が増加しますが、
「CPU 電圧 Offset」を組み合わせることで消費電力の増加を抑えられました。
Offset&PBO(PPT/TDC/EDC) | アイドル消費電力(W) | 電力増減値(W) | 最大Clock | Clock変化率 |
未設定&141/95/140【定格】 | 79 | 0 | 4343 | 0.0% |
未設定&141/95/160 | 82 | 3 | 4340 | -0.1% |
-0.1V&141/95/140 | 79 | 0 | 4341 | 0.0% |
-0.1V&70/95/100【省電力】 | 72 | -7 | 3890 | -10.4% |
-0.1V&141/96/160【パフォーマンス】 | 80 | 1 | 4341 | 0.0% |
PBOの設定 … PPT/TDC/EDCの設定
最大Clock … アイドル時の最大Clock
Clock変化率 … 定格を基準にしてClockが増減した割合
アイドル消費電力 … アイドル時にワットモニターで計測したPC本体の消費電力
消費電力変化率 … 定格を基準にして消費電力が増減した割合
まとめ
以上の結果から、「CPU 電圧 Offset」を設定することは、パフォーマンスを維持しつつ
消費電力を減らすことができ、実用性が高いです。
テスト環境は第2世代Ryzen7 2700Xでしたが、第3世代Ryzenでも効果があるそうなので
ぜひ挑戦してみてください。※参考:Ryzen 9 3900Xの発熱を抑えてみた – d44.jp さん
ワットチェッカー紹介
「サンワサプライ ワットモニター TAP-TST8」を使用して計測していますが、こちらは廃止モデル。
もし試してみるなら、同じ機能をもつ「サンワサプライ ワットモニター TAP-TST8N」はいかがでしょうか。
- 現在の消費電力を表示
- 計測期間中の累積消費電力を表示
- 1kWhあたりの電気代を設定し、測定期間中の電気代を表示(1日および累積)
という機能があります。
>サンワサプライ ワットモニター TAP-TST8N 製品説明ページへ
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