メモリー設定初心者だった私が「オーバークロックメモリー(以降:OCメモリー)」の設定と、
更にそこから「メモリーのタイミングを詰めていく」作業を行ったときに実施した設定方法を紹介します。
なお、メモリーのタイミング設定については試行錯誤した上で確立した独自のやり方となります。
スマホで見ながらUEFI画面を操作したい場合は以下のQRコードで本ページを開けます。

OCメモリーを採用するメリットとは?
DDR4メモリーは電圧1.2V メモリークロック2666MHzで動作するのが主流かと思います。
OCメモリーはメモリー電圧を1.35Vに昇圧して3000MHz以上で動作させます。
中には4000MHzで動作するものもあります。
このような高クロックで動作するメモリーを搭載することで、
PC全体のパフォーマンス向上が期待でき、特にゲームでフレームレートが向上します。
その比較テストをこれから見ていきます。
※2019年頃からメモリー電圧1.2Vでも3200MHzで動作する「ネイティブ3200MHzメモリー」が登場しましたので、3200MHzでもOCではないものも登場しています。
OCメモリーの設定手順
OCメモリーはPCに差し込んだだけでは性能が発揮されません。
UEFI(BIOS)画面から次の設定する必要があります。
1.メモリーに設定されている「X.M.P」 を読み込み、設定をそのまま利用する。
2.メモリークロックやタイミング設定を手動で調整する。
基本的には UEFI(BIOS)画面で、1の「X.M.P」の読み込みを行うだけで使えます。
ただ、「X.M.P」で読み込んだ設定でも動作しないことがあります。
そのときは「メモリークロックを1段階下げる」ことで動作する場合があります。
しかしそれだとメモリークロックに対してタイミングが緩い可能性もあるため、
2のようにタイミング設定を手動で調整することができるとよりパフォーマンスを発揮できます。
そのため、これから両方のやり方を紹介していきます。
CPU:AMD Ryzen 7 2700X
マザーボード:ASUS PRIME X470-PRO
メモリー:G.Skill F4-3600C19D-16GSXWB (DDR4-3600MHz CL19-20-20-40 8GBx2枚)
メモリーから「X.M.P」を読み込む方法
メモリーから「X.M.P」の設定を読み込む手順は以下のとおりです。
※Ryzenを搭載したASUSのマザーボードでは「X.M.P」ではなく「D.O.C.P」と呼びます。
1.UEFI画面を開き、 【Advanced Mode】に切り替える。
2.上部メニューの「Ai Tweaker」を選び、「Ai Overclock Tuner」を【自動】から【D.O.C.P】に変更する。メモリークロック、タイミング、メモリー電圧の設定が読み込まれて置き換わります。
3.メニューの「終了」を選択し、【変更を保存しリセット】を選択。
X.M.Pを利用した設定は以上で完了です。
「X.M.P」の設定で動作しなかった時の対処法
「X.M.P」の設定で問題があるときは2つの対処法があります。
1.メモリーのクロックを下げる
2.メモリーのタイミング設定を緩めて起動することを確認してから詰める
1のメモリーのクロックを下げる方法は簡単です。
「X.M.P」を設定したのと同じ画面に「メモリー周波数」という項目がありますので、これを1段階ずつ下げていきます。
2のメモリーのタイミング設定を緩めて起動することを確認してから詰める作業については、
後述のタイミングを調整する説明で解説します。
PC自体が起動しなくなった場合の対処法はこちら。
メモリークロックとタイミングを調整する方法
手動での調整は独自のやり方となります。
方法を一言で言ってしまえばトライアルアンドエラーです。
私が初めてメモリーを調整したとき、メモリーのタイミングには数値が4つしか書いてないのに、
実際の設定は6ヶ所入力しなければならないことが理解しづらく非常に戸惑いました。
なので、メモリー設定初心者の方がこれを読んで設定できるようにお伝えしたいと思います。
調整を始める前に知っておきたいメモリーの話
これからお話するのは、私が使用しているメモリーを実例にして解説していきます。
私が使用しているメモリーは「G.Skill SniperX F4-3600C19D-16GSXWB (DDR4-3600 8GB×2)」です。
このメモリーは「DDR-4 3600 CL19-20-20-40」といった形で表記されます。
「DDR-4 3600 CL19-20-20-40」の意味は、
メモリーの種類=DDR4 で、
X.M.Pを反映させると
メモリークロック=3600MHz
CL(CAS# Latency)= 19
tRCD(Trcdrd 及び Trcdwr の2つ)= 20
tRP(RAS# PRE Time)= 20
tRAS(RAS# ACT Time)= 40
が設定される
ということを表しています。
そしてもう一つ 、タイミングに書かれていませんが「Trc」という項目も設定します。
つまり設定が必要な項目は6つ
CL、tRCD (Trcdrd 及び Trcdwr の2つ) 、tRP、tRAS、Trc
6つも調べるのは面倒だと感じるかもしれませんが、
今回のやり方で実際に調べるのは「CL」と「tRCD」だけです。
なぜなら
・「tRCD」と「tRP」は同じ数値で動きます。
・「tRAS」は「tRP+20」に設定すれば動きます。
・「Trc」は 「tRP」と「tRAS」 の合計値を入力すれば動きます。
と、残りは計算で済ませられるからです。
以上を踏まえて次に続きます。
※「X.M.P」で動作せず、詰める前にタイミングを緩める方法を知りたい人はこちら
X.M.Pの設定をもとにタイミングを詰めていく方法
X.M.Pの設定が正常に動作していることを前提として、更にタイミングを詰めていく(小さくする)方法を解説します。
ここではメモリークロックを「3600MHz」→「3533MHz」に調整したときの実例をもとに解説します。
※使用しているマザーボード「ASUS PRIME X470-PRO」はCLの数値が偶数しか反映されていないので、偶数値で調整しています。
※使用するメモリーは「G.Skill F4-3600C19D-16GSXWB」(DDR4-3600MHz CL19-20-20-40)です。
1.X.M.Pの設定を読み込む。
2.メモリー周波数を変更する(上げたり下げたりする場合)
3.「CAS# Latency」の値を調整し、PCの様子を見ながら決める。
4.「Trcdrd」「Trcdwr」「RAS# PRE Time」の3つを同じ数値を入力しながら値を調整し、PCの様子を見ながら決める。
5.残りの「RAS# ACT Time」と「Trc」を計算して入力する。
1.まず「Ai Tweaker」内の「Ai Overclock Tuner」を【自動】から【D.O.C.P(X.M.P)】に変更します。
「DRAM Timing Control」では次の値が設定されます。
※「CAS# Latency」には19が設定されますがOS上では20となっているので、20として扱います。
・CAS# Latency 【19】
・Trcdrd 【20】
・Trcdwr 【20】
・RAS# PRE Time 【20】
・RAS# ACT Time 【40】
・Trc 【AUTO】
2.「Ai Tweaker」内の「メモリー周波数」を【DDR4-3533MHz】に変更します。
3.「Ai Tweaker」内の「DRAM Timing Control」を選び、メモリーのタイミングを設定する画面を開きます。
4.「DRAM CAS# Latency」の適正値を探します。他の値はまだ変えません。
【20】から「-2」下げ【18】に設定する→「変更を保存しリセット」→Windows起動成功
→【18】から「-2」下げ【16】に設定する→「変更を保存しリセット」→Windows起動成功
→【18】から「-2」下げ【16】に設定する→「変更を保存しリセット」→Windows起動せず
これでPCが起動する「DRAM CAS# Latency」の値は【16】であることがわかりました。
5.次に「Trcdrd」「Trcdwr」「RAS# PRE Time」の値を探します。3つまとめて設定します。
【20】から「-2」下げ【18】に設定する→「変更を保存しリセット」→Windows起動せず
→【18】から「+1」上げ【19】に設定する→「変更を保存しリセット」→Windows起動成功
これでPCが起動する 「Trcdrd」「Trcdwr」「RAS# PRE Time」の値 は【19】であることがわかりました。
6.残りの「RAS# ACT Time」と「Trc」の値を設定します。
・「RAS# ACT Time」は「RAS# PRE Time」の【19】を+20して【39】
・「Trc」は 「RAS# ACT Time」【19】と「RAS# PRE Time」【39】 の合計値【58】を入力
→「変更を保存しリセット」
→問題なくWindowsが起動するはずです
7.最後の仕上げにmemtest86を実行し、1回Passしたら設定完了です。
memtest86の使い方はこちらの記事では扱いませんので検索してみてください。
もしエラーが出てしまったら「Trcdrd」「Trcdwr」「RAS# PRE Time」の値を【+1】ずつ増やして
「RAS# ACT Time」「Trc」を再計算すれば直るはずです。
X.M.Pで動作せず、タイミング設定を緩める方法
1.「メモリー周波数」はそのままにしておく。
2.「CAS# Latency」「Trcdrd」「Trcdwr」「RAS# PRE Time」を増やす。
これらの設定が【20未満】なら【20】に増やす。【20】超えてるならもうちょと増やしてみる。
とにかく増やしてみる。
「RAS# ACT Time」は「RAS# PRE Time」の【20】に+20して【40】、
「Trc」は 「RAS# ACT Time」【20】と「RAS# PRE Time」【40】 の合計値【60】を入力。
3.PCが起動したらメモリータイミングを詰める作業へ。
起動しなかったら、このメモリークロックで動作させることを諦めた方が良いと思います。
これ以上緩めてもパフォーマンスに期待できません。
メモリークロックを下げて起動するクロックを探していきましょう。
起動したらメモリータイミングを詰める作業へ。
設定を詰めたらPCが動かなくなった場合の対処法
設定はトライアルアンドエラーなのでPCが起動しなくなる時があると思います。
私の使用しているマザーボードでは3回起動に失敗するとSafe modeで起動するようになります。
Safe modeが起動しない場合はCMOSクリアを実施すれば設定が初期化されるので解消するはずです
参考リンク:CMOSクリア手順 – TEKWIND
メモリー設定後はmemtest86を1回Passしておきたい
メモリー設定後、メモリー動作をチェックする「memtest86」は必須ではありませんが、
後で作業中にPCが落ちるなどのトラブル回避のためにも先にテストしてしまった方が良いと思います。
16GBのメモリーチェックは、1回Passするだけでも40分程度かかります。
もしテスト中に1回程度のエラーが出てしまったら、もう一回そのままテストし、
Passしたらセーフ、再度エラーが出たら設定に問題有りと判断します。
余談ですが、正常なメモリーでもメモリーエラーは結構な頻度で起こるものらしいです。
参考リンク:グーグルの研究が示すメモリエラーの真実–明らかになった高い発生率 – CNET Japan
あとがき
この設定方法が最善である自信はありませんが、
メモリーの設定方法について具体的な手順がわからないよりは良いと思い記事にしました。
参考になりましたら是非挑戦してみてください。
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